不死の軍勢を率いるぼっち死霊術師、転職してSSSランク冒険者になる。(2)

第一章 死霊術師、冒険者になる。

 朝日は昇り、サルディア皇国首都は平常通りに動き出していた。

 だが、誰もが表情に不安を隠せずにいる。

 昨夜の魔物襲撃のことは既に市民にも伝わってはいるものの、一人の女性が直接市街に出向いていることで、混乱は大部分が解消されているようにも見える。

 皇国の銀鎧を纏って、首都の街並みを歩くのはカルファ・シュネーヴル。

 首都の民の不安そうな挨拶に、一つ一つ笑顔で返事をしながら、街で最も大きな建造物の中に、三人と一匹は入る。

 ガラス張りの窓と、敷き詰められた大理石は、長く放浪生活を続けてきたローグにとって全てが新鮮だった。

 「ここが大聖堂です。元はナッド・サルディア陛下がこの地を統治していた場所なのですが、先ほどの兵士からの報告によると、陛下は逃亡していた先で、ゴブリンたちの軍勢の襲撃に遭い、死亡したことが確認されました。カルム」

 カルファが凜として言うと、そこに跪いていたのは、先ほどローグが救った兵士たちだった。

 その先頭にいるカルムは朝の光に反射して輝く、両手に収まるほどの水晶玉を持ち出した。

 「本当によろしいのでしょうか、カルファ様」

 ちらりと、ローグたちを疑念の目で見るカルムだが、カルファはそれを一蹴する。

 「前皇帝、ナッド・サルディア様の死亡が確認された現時点において、皇国の最高責任者は私です」

 「はっ」

 カルファは、ローグたちに言う。

 「これより、カルファ・シュネーヴルが鑑定特殊スキル《隠蔽》を使用します。ローグさん、まずはこの水晶玉に手を当ててみてください」

 「あぁ、こう……でいいのかな」

 その横では、興味深そうにに辺りを見渡すイネスの姿があった。

 「それにしても……」

 と、カルファが苦笑い気味にローグの肩に目を移した。

 『なんだ小娘。我に……よっと、何か用か』

 「ニーズヘッグさん、そんなに小さくもなれたんですね」

 『あぁ。この姿は力加減がきかぬのでなるべくは避けているのだがな。主の命とあらば仕方があるまい』

 ローグの肩に、よじよじと登ったのは一匹の黒いドラゴンだった。

 身体が極限まで小さくなり、ローグの右肩にぴったりとつかまる可愛らしい小龍に、カルファはついにやけながら手を差し伸べてしまう。

 『気安く触れるなよ小娘。この身体の小ささと、夜間以外には力が半減してしまうとはいえ、お主を消し炭にする程度は造作もないことだ』

 キシャァと、牙を向けられたカルファだが、それがむしろ彼のかわいさを助長しているようにも思えた。

 十メートル級の巨龍が随分とミニマム化されたニーズヘッグの鱗は、角質ばった鱗ではなく、むしろ生まれたての小動物のようにぷにぷにとした質感がある。

 「イネスさんと、ニーズヘッグさんは他のスケルトン・ゾンビの軍勢のように夜間に消失するわけではないのですか?」

 「あぁ。不死の軍勢は、一般的な死霊術師のスキル《蘇生術》なんだが、この二人には死霊術師の最高到達スキル《受肉術》を使ってる。不死の軍勢は不完全蘇生、二人は完全蘇生ってとこだ」

 「《受肉術》……!? 世界七賢人がずっと研究して、いまだ成功例がない、太古の昔に滅びた遺骸を現世に呼び戻す、あの《受肉術》ですか!?」

 食い気味にカルファがつっかかる。

 肩の上でのんびりと伸びをするミニマムニーズヘッグと、ローグの腕に絡まりとろんと恍惚の表情を浮かべるイネスを見比べた。

 「そ、そんなに驚くことじゃないと思うんだけど……?」

 「最低でもSSランクレベルの技術と魔法力が必要だからと結論づけて諦めかけていたんですよ!?」

 ローグは、頭をうんうんと悩ませつつ呟いた。

 「その、SSランクってのがいまいち分からないんだよな。挨拶のステータス開示の時は、大体どこにも所属してなかったからよくは分からないんだ」

 「それに関しては、冒険者ギルドで説明を受ける方が早いとは思いますが……。なるほど、近付こうとする人もなかなかいなかったせいで、死霊術師は未解明のスキルもたくさんありますからね」

 カルファが水晶玉を見つめながら呟いていると、水晶玉は青に発色しながらローグの体を優しく包んだ。

 「おー……」

 感嘆の声を上げるローグに、カルファは言う。

 「これでローグさんの職業は、完全に隠蔽されましたよ。職業適性がなかったので、職業としては《冒険者》としておきましたので、首都最大の冒険者ギルドで冒険者登録をしてみることをおすすめします。もちろん、登録するためには多少の実力試験がありますが、ローグさんに関しては心配ないと思いますので」

 《冒険者》という甘美な言葉に、ローグは心底打ち震えていた。

 死霊術師から転職すれば、今までのように挨拶時のステータス開示に億劫になることもない。

 「よし、それなら早速その冒険者ギルドとやらに行ってみようか。イネス、ニーズヘッグ、行くぞ!」

 「──仰せのままに」

 『こんなに喜んでいる主を見るのも、初めてかもしれぬな。感謝するぞ、小娘。くはははは』

 「小娘じゃありません! 私の名前は、カルファ・シュネーヴルです!」

 そう言いながらも、カルファは笑みを浮かべていた。

 半ば走り気味に大聖堂を後にするローグ一行を見守っていると、カルムがそっとカルファに耳打ちをする。

 「カルファ様。別れのようにお送りされるのは構いませんが、本日の冒険者ギルド実力試験の試験官は、カルファ様のはずでは──?」

 カルムの囁きに、カルファはさっと表情を青ざめさせた。

 「現状、魔物の来襲と、ナッド陛下の死去を外部に知らせるわけには参りません。何卒、よろしくお願いします」

 「分かっていますよ。全く、巨大な戦力を手に入れたとはいえ、考えることが山のようにありますね……」

 カルファ・シュネーヴルの胃痛は、ひどくなるばかりだった。

 ***

 サルディア皇国冒険者ギルドの建物は、小綺麗な酒場のような雰囲気だった。

 シンプルに、長方形の箱のような形をしている。

 おまけ程度に、その建物の正面には『冒険者ギルド アスカロン』と書かれた看板が立てかけられているだけだ。

 ギルドの扉に手をかけたローグは、少し深い息を吐いた。

 「どうされましたか? ローグ様」

 イネスが心配そうにローグを覗き込む。

 「少しだけ、緊張してるみたいだ。死霊術師でない俺を人に見せるのは、これが初めてだからな」

 「ご心配はありません。ローグ様ならばきっと、優秀なお友達を見つけることができます。その時に、私たちを見捨てないでくだされば、それだけでイネスは幸せでございます」

 ぎゅっと、主の手を握るイネスに、肩にちょこんと座るニーズヘッグも続く。

 『我とて、主の役に立てるのであれば光栄だ。何なりと、申しつけるがいい。この世に再び全盛期の力のまま蘇生してもらえた分の恩は、返すつもりであるからな』

 扉を開けば、ほわりと腹の減る匂いを漂わせる空気が満ち満ちていた。

 カウンターの受付嬢が忙しなく接客に応じる中で、新たに入ってきたローグたちを見てにこりと笑顔を浮かべる。

 「初めまして、サルディア皇国の冒険者ギルド・アスカロンへようこそ。本日新しく冒険者認定試験を受ける方でしょうか?」

 にこにこと応じる受付嬢に、ローグは言う。

 「あぁ、職業適性に《冒険者》が出たからね」

 自信満々にローグが言うと、ぴたりと酒場内が静まりかえった。

 「……俺、何かおかしなことでも言ったか?」

 ローグは訝しげにイネスに問うが、彼女も、肩に乗るニーズヘッグも首を傾げるばかりだ。

 受付嬢は苦笑いを浮かべながらも、しどろもどろにローグへ告げる。

 「ま、まぁ、その、冒険者といっても十人十色と言いますし、これから少しずつ冒険者ギルド内で経験を重ねていけば、いずれ適正がはっきりすることもありますから、その、そこまで気落ちされない方がいいですよ?」

 何か、ローグに隠すような物言いをしたので、イネスが苛々し始めたのが分かる。

 そんな中、鉄の鎧を身に纏った男がやってくる。

 「やぁやぁ、君があまりにも自信満々にギルドに入ってくるもんだから、皆どの専門か見極めたかったんだよ。どのパーティーも専門職は取り合いになっちゃうからね」

 「どういうことですか?」

 ローグが問うと、青年は言う。

 「簡単なことさ。ほら、これがオレのステータスだ」

 青年は自らの横にステータス画面を表示した。

 ─────────────────────

 【名前】 ラグルド・サイフォン

 【種族】 人間族

 【性別】 男

 【年齢】 24

 【職業】 冒険者《剣士》

 【クラス】C

 【所属】 冒険者ギルドアスカロン ドレッド・ファイア

 ─────────────────────

 「これが基本のステータス画面なんだよね。ここから、冒険者ギルドに所属する場合は、新しい項目が追記されるんだ」

 そう言って、青年──ラグルドは親切にもステータス画面の職業の画面を押す。

 すると、彼の目の前には新たにツリー状にもう一画面が追加される。

 ─────────────────────

 【職業】 冒険者《剣士》

 【レベル】42/100

 【経験値】859

 【体力】 B

 【筋力】 B

 【防御力】D

 【魔法力】E

 【俊敏性】C

 【知力】 E

 ─────────────────────

 「っと、こんな感じでね。前衛の剣士や戦士部隊、中衛の魔法術師のような後方支援部隊、そして後衛の回復部隊……みたいなのが冒険者パーティーによくある編成だ。オレは筋力、体力が人より自信があるから《剣士》ってのが職業適性になる。

 例えばウチの奴等だと、魔法力が秀でている奴は《魔法術師》、俊敏性が秀でていれば《盗賊》……ってな感じで、それぞれに役割が割り振られるんだよ。いつかはSSランクの能力者になるのが、オレの夢なんだ!」

 そう言って目を輝かせるラグルドに、ローグは「SSランク?」とオウム返しをした。

 「あぁ、世界七賢人……サルディア皇国だと、カルファ・シュネーヴル様が【知力】の値でSSランクを保持しているんだ。SSランクともなると、人類最高到達点として世界七賢人に匹敵するんだろうけど、道はなかなかに遠いんだよねぇ」

 それら全てを聞いたローグは、手をポンと叩いて納得げに頷いた。

 「なるほど。ってことは、まだ《冒険者》としか出ていない俺は、全体的に秀でた能力がないってことになるんですね……」

 「で、でもそんなに落ち込むことはないよ。過去にも、冒険者の専門職適性が見つからない人もちらほらいたんだし、冒険者ギルドに来て、しばらく小さな依頼からコツコツこなして修行をしていって、最終的に自分の得意な専門職を手に入れることもあるからね」

 今まで人の親切というものに触れたことがなかったローグは、心底感動した。

 こうして普通に笑い合いながら話せるのも、全て死霊術師という職業が隠蔽されているおかげだった。

 とはいえ、冒険者としての専門職の適正に関しては、残念ながら見つかっていないようだが……それでも、以前に比べるとよっぽどいい。

 「では、ローグさん。まだ専門職が決まっていないので専門職適正欄は空けておきます。受験に際して、この水晶玉に手をかざしてください」

 受付嬢が水晶玉を差し出す。

 ローグは、言われたとおりに手を差し伸べる。

 今まで、どこにも所属していなかったために全く分からなかった自分の能力値を、初めて見る機会ということで少しだけワクワクした。

 ─────────────────────

 【名前】 ローグ・クセル

 【種族】 人間族

 【性別】 男

 【年齢】 18

 【職業】 冒険者(死霊術師)

 【所属】 冒険者ギルド アスカロン(仮)

 【ギルドランク】不明

 ─────────────────────

 なるほど、隠蔽された職業はカッコ書きで描かれていた。イネス、ニーズヘッグは隠蔽された(死霊術師)の文字を視認しているらしいが、受付嬢やラグルドには見えていないらしい。

 ローグは次に、職業の画面をツリー状に開いた。

 「……え?」

 すると、受付嬢が口をぽかんと開けた。

 ─────────────────────

 【職業】 冒険者

 【レベル】150/100

 【経験値】99,999,999

 【体力】 SSS

 【筋力】 SSS

 【防御力】SSS

 【魔法力】SSS

 【俊敏性】SSS

 【知力】 SSS

 ─────────────────────

 「……ナァニコレ」

 ラグルドが固まった。

 受付嬢は、信じられないものを見るような目で、ローグのステータス画面を上下に何度も見直した。

 「ま、ま、ま、まさか……!! ローグさん、どの数値も秀でていないから職業適性が出ないんじゃなくて、どの数値も優秀すぎて職業適性が絞れないってだけ……!? うそでしょ……! 何、この数値、こんなの、見たことがないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」

 瞬間、ざわつき始めていた酒場が、再びぴたりと静まりかえった。

 受付嬢は、口をパクパクさせながら言う。

 「経験値は、今までの人生全ての経験が累積して、数値化されたものですよ……? きゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅうまん、きゅうせんきゅうひゃくきゅうじゅうきゅう……?」

 何度も何度も桁数を数えるが、事実は変わらない。

 振り返ってみれば、死霊術師として生活していたときは、配下の不死兵が暴走した際に、数百の軍勢を腕力一つで止めなくてはならないことが何度かあった。

 さらに、受肉させたばかりの頃のイネスやニーズヘッグは、自らの力で世界を征服しようとして何度も何度もローグに叛旗を翻してきた。

 その度にいくつもの死闘を繰り広げ、時には一地域の生態系に影響を及ぼすほどの戦いをしながらもローグは返り討ちにしてきたのだ。

 何千、何百回と自分の配下と戦い、信頼を勝ち得たローグの経験はいつの間にか凄まじいものになっていたのだった。

 「す、凄い! 凄すぎるよローグさん! オレもこんなの見たことがないよ! 世界七賢人の方々よりも上のランクって、あったんだね!」

 「ラグルド! 抜け駆けは許さないよ! ねぇローグさん。良かったら私のとこのパーティーに来ない?」

 「ちょ、ちょっと待て! ウチだってちょうど中衛の魔法術師が不足してんだぞ!」

 「わたしのところも、今実力のある剣士がいないの! お願い、ローグさん! ウチのパーティーに是非!」

 堰を切ったように冒険者たちがローグの周りを囲む。

 「ローグ様……! ローグ様、取り巻きの排除の許可を!」

 「だ、ダメに決まってるだろ! ちょっと待って、皆さん落ち着いて!?」

 『くはははは。主は人気者だな』

 「言ってる場合か!」

 もみくちゃにされて、次々にパーティーへと勧誘を誘われるローグ。

 こんなにも人に頼られ、近づかれたことがないローグは、柄にもなく動揺していたのだが、そこに救世主が現れる。

 ダンッ!!

 持っていた発泡酒──エールを机の上に叩き付ける音がした。

 「うるせぇぞテメェら! よりにもよって、冒険者資格もねぇクソガキ一人にへこへこしやがって、プライドねぇのか!?」

 ただ一人、椅子に座ったまま食事を続けていた強面の男が声を荒げる。

 獅子のようなタテガミを持つ、筋骨隆々とした中年の男。

 口の周りの無精髭に、白髪交じりではあるがそのギラギラとした眼光は一向に衰える様子がない。

 左目の辺りには、まるで獣に引き裂かれたように潰れた跡がある。

 残った右目でギロリと他の冒険者たちを睨み付けた男に、ラグルドは言う。

 「いやいや、仕方がないでしょう。グランさんだって、SSSランクなんて見たことがないでしょ?」

 「あぁ、そうだな。そいつが本当にSSSランクだったら、の話だがな」

 「……?」

 傷ありの男、グランの言葉に冒険者たちが押し黙る。

 グランは立ち上がって、ローグの前に立った。

 「世界七賢人でさえ、どこかの力が特化してSSランクになったという。こんな若造が全ての項目でSSSだなんて、俺は信じねぇ。能力を捏造している可能性もあるんだからな。大体、こんな数値が世の中に存在するわけねぇだろう。水晶玉を信じ切って、たとえ一ミリたりとも疑おうとしないその神経が信じられねぇよ」

 ローグに指を突きつけて、酒臭い息を吐くグランは、立てかけていたボロい直剣を肩に担いだ。

 ラグルドは、ローグのご機嫌を取るかのように「そんなことこそ、あるわけないでしょう?」と苦笑いを浮かべる。

 「ステータスの隠蔽、改竄なんて所業、誰ができるって言うんですか」

 「それこそ、俺たちの大将の得意分野じゃねぇか。あの小娘だって、自らの能力を偽って、実力を誤魔化して相手を油断させてから屠り続けた策士なんだからよ。世界中探せば、そんなことができる奴はゼロでもねぇだろ」

 「はっ! カルファ・シュネーヴル様がたかだか一介の冒険者に肩入れするなんてことこそ、有り得ないと思いますけどねぇ、ローグさん。……あれ、ローグさん?」

 ラグルドが慰めるようにローグの顔を覗くが、ローグはバツ悪そうに顔を背ける。

 『あのおっさん、遠からず近からずってところをついてくるのだな、くはははは』

 「笑えないけどな……」

 ニーズヘッグが耳元で囁いたのを、ローグは引きつった笑みで返すしかなかった。

 「ともあれ、お前さんの実力はこの後分かるだろうよ。精々、化けの皮が剥がれねぇようにするんだな。何をやったのかは知らねぇが、SSSランクなんて阿呆臭いモン出しやがって。間違っても俺たちの邪魔はしないでくれよ」

 ぐびりとエールをあおったグランは、居心地悪そうにギルドを後にした。

 ローグの後ろでは、ひそひそと噂話が流れている。

 「グランさん、そういえば今度でAランク昇格試験は三度目なんだってね」

 「そういえば、そろそろオレたちも昇格試験じゃないか! ロ、ローグさん! とりあえず、また後で詳しい話聞かせてよ!」

 そう言って、ラグルドをはじめとする多くの冒険者がいそいそと自分たちの準備を始める。

 どうやら、冒険者になるための試験を受けるローグたちと、冒険者としてのランクを上げるための試験が同時に行われるらしい。

 再び酒場内がざわざわとしてくると、ようやく人波を掻き分けてローグの隣に立ったイネスは、殺気を込めて呟いた。

 「ローグ様、あの者はローグ様を侮辱しました。万死に値します」

 「落ち着けイネス。いいじゃないか、怖がられて、怯えられるよりもよっぽどマシだ。それに、これから友達になるかもしれないだろ?」

 「ローグ様を悪く言う輩とまで、お友達になろうとせずとも良いのでは……?」

 「あの男の言ってることも、あながち的外れじゃないよ。別に、ちょっとやそっとバカにされたくらいで殺気立てるようなことじゃない」

 「はっ。失礼致しました。ローグ様の器の大きさに、感服するばかりです」

 ローグは、小さくため息をついた。

 そんな中で、少し動揺しつつも受付嬢が再びローグの前に立った。

 「あ、あの……そろそろ冒険者のギルド試験が始まりますので、用意をお願いします」

 こうして、ローグが冒険者になるための試験が、不穏に幕を開けたのだった。